撮られる経験の話です。


写真を撮られました。何度かTwitterで報告させていただいておりますし、まあ今更まとめて言わなくてもいいことかもしれませんが。

お読みになっている皆さんも、写真を撮られるという経験を一度はしたはずです。スタジおでの撮影だけでなく、プライベートでの「はいチーズ!」「はいポーズ!」「お姉さん、ちょっと顔かたいなあ」などなど。身構えて撮られる経験の他には、パーティーなどで盛り上がっているところをカメラマンに激写される、なんて経験もありますよね。そういうの、結構楽しいですよね。お酒もはいってて気分もいい。そんな時だったら、ちょっと化粧が落ちてても(あ、それは嫌だ)、髪の毛がぐしゃぐしゃってなってても、いつものキメ顔じゃなくっても。


私も激写体験があるんです。ただパーティー会場で、ではなく、都営大江戸線の車内で。休日だったと思います。電車はすいていました。私は疲れた表情で車両の端っこに座っていました。その日は読書用の文庫を忘れていたと思います。珍しくiPodで音楽も聞いていませんでした。多分、二駅か三駅程度の移動だったんでしょう。車内をよく見ていたのを覚えています。右からおばさんが歩いて来ました。ゆっくりと。視界に入ってきたおばさんをよく観察すると、クリクリのパーマをかけ、化粧は薄め、服装は地味でスーパーのビニール袋を持っています。右手には二つ折りの携帯電話(ピンク色)が見えます。近くなるとおばさんが携帯画面を嬉しそうに眺めながら、車内を見渡しています。私の前に来ました。「何が楽しいんだろう、この人は」と思っておばさんを眺めていると「カシャッ!」という音が聞こえました。ちょうど私の顔の前に携帯電話があるその瞬間の出来事です。写真を撮られました。おばさんは、呆気に取られ口を半開きにした私をちらりと見て微笑み、そそくさと次の車両に逃げていきました。

何が起こったかわからない私は2〜3分ほど考えこみました。「これはおかしい。写真を何に使うんだろうか、この人は」と疑問や不安が腹の底から沸き上がったその時には、すでに、おばさんの姿はもうありません。どこにもぶつけようの無い、不気味な印象だけが残りました。これは1年ほど前の出来事です。Twitterで報告した際は肖像権の事などアドバイスをいただいた記憶があります。その節は本当にお世話になりました。ところが、写真を撮られた経験はこの一度だけではありませんでした。


半年ほど前のできごとです。これは私も悪かったんです。ラッシュ時の混雑した車内で足がぶつかった男性の渾身の「絡み」を、完全に無視していたのですから。あれだけ人がいる中で、私と彼の距離も10数cmという状況で、目の前の人に「絡む」なんて勇気のいる事だと思います。ほんとに。でも私は相手をするのがめんどくさかった。聞こえないフリを通していたんです。iPodで音楽も聞いていましたし。イヤフォンは真っ白いカナル型。目立ちます。たぶん、彼も聞こえていない事はわかっていたと思うんですが…。しばらく絡み続けた彼は、おもむろに、右のポケットからiPhoneを取り出しました。諦めたのかな。と、思った私が甘かった。iPhoneを私の顔の前に持ってきた彼は「パシャッ」と私の顔を撮影しました。ポケットにしまう直前、iPhoneの画面を確認するとカメラが起動していたので間違いありません。

人生2度目の激写ですから、私もだまっちゃおりませんよ。カナル型のイヤフォンをしなやかに取り外し、彼の顔を見据え「ちょっとあんた」と声をかけました。「撮影したやろ。私の顔。何変なことしてくれてんの。削除してや、その写真」と丁寧に伝えました。すると悪魔のような笑顔を作り(正確に言うと彼の想像する悪魔の顔に近づけようと努力をしている顔なので滑稽極まりないのですが)「え、何いってるんすか。気持ち悪い。気持ち悪い事言わないでくれますか」とまるで私が悪者かのように言い放ったのです。彼は次に止まった駅でそそくさと降りていきました。降り際も「ほんとに気持ち悪い事やめてくれませんか」と捨て台詞を吐きながら。


いきなりの激写体験は、なかなか無い事でしょう。ただ、この1年とちょっとで2回も出くわしてしまったものですから油断はできません。もしかすると皆さんの中にも似たような経験をお持ちの方がいらっしゃるのでは無いでしょうか。くれぐれも皆さま、激写にはお気をつけくださいませ。

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